現時点において、考え得る限り最高に優秀な市場の取引手(トレーダー)が市場を席巻している。コンピュータである。超高速のコンピュータと精緻なアルゴリズムで武装したプログラムコードが、莫大な利益を市場から吸い上げている。この取引は、時に高頻度取引(high frequency trading、あるいはflash trading、flash orders)と呼ばれる。
人間が関与するまでもなく瞬時に市場の動向を把握し、即決で売り買いの注文を発行する。あのquantたちが編み出した打ち出の小槌である。ときには意図的に大量の売りや買いの注文を出し、それに対する市場の動向を瞬時に見極めたうえで、より本格的に儲かるための売り・買いの注文を出す。人間が関与する余地はない。その取引の全ては一片のプログラムコードによって自動的に発注される。利鞘を稼ぐためには、むしろ好都合である。
報道によると米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission, S.E.C)は、フラッシュ・トレーディングの取り締まりに動き出したらしい。N.Y. 証券取引所の取引は、2005年に比して164%もの成長を達成している。今や、その取引の半分以上は、コンピュータとプログラムによって武装した一握りのフラッシュ・トレーダーが寡占しているものと目されている。
フラッシュ・トレーディングでは、コンピュータのトレーダーが市場の行方を瞬時に判断し、電撃的に売り買いの注文を発行する。通常の市場参加者がまったく気づかぬうちに大規模な利益を挙げてしまう。ハイ・フリクエンシー・トレーダー(high-frequency trader)直訳すると「高頻度トレーダー」であるが、要するに、コンピュータを使って、自動的に次々と売り買いの注文を発行する市場参加者のことである。
S.E.C.のヘッド、Mery L. Schapiro女史の見解によると、フラッシュ・トレーディングでは、ほんの三十ミリ秒ほど、他の一般トレーダーに先駆けて市場動向のデータを入手できる。情報を優先的に得ることは、市場の平等性の原則に反しており、違法である。とのことだ。
高頻度取引では、
1)「統計的評価手法が駆使されているハズ」
これまでに蓄積されたデータに照らして、株価の推移を予測する。それを元に次なる投資先を決める。そのためには統計的手法に基づいた信頼度の評価が必要となる。
2)「業種間での綿密な株価の相関評価がなされているハズ」
表向きまったく関連の無い業種間であっても、その株価の推移に大きな関係、相関が認められる場合がある。つまり、ある株価の動向が別の株価の動向に影響を及ぼすことの評価をもって、株価変動の予測に役立てようとする目論みだ。
3)「徹底的なシミュレーションをしているハズ」
できあがったプログラムコードを過去の市場動向のデータに適用し、利益を上げることができるかどうかチェックしているだろう。
4)「並列コンピュータを使っているハズ」
おそらくかなり高額な、ハイスペック並列コンピュータを導入していると思われる。ミリ秒のズレが利益の行方を左右するとすれば、これくらいの投資も安い物だろう。
5)「quantたちの役割」
市場動向のモデル化と、利益を上げるアルゴリズムの構築には、多くの優秀なquantたちが動員されていることだろう。
赤字に陥ったゴールドマン・サックスが、世界経済が完全に復帰したと言えないこの時期に急激に業績を上げ、公的資金の返済ができたこともフラッシュ・トレーディングのおかげであろう。
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