2012年9月23日日曜日

もし、日本という・・・【読書感想文】


読書感想文をUPします.


「もし、日本という国がなかったら」 [単行本(ソフトカバー)]
ロジャー・パルバース (著), 坂野由紀子 (翻訳)
出版社: 集英社インターナショナル (2011/12/15)
ISBN-10: 4797672218

5つ星のうち 4.0
味のあるものがお好きな方にお勧め 2012/9/18
By kn

この本は通常の日本論ではありません.確かに偏っていると思われる所もありますし,多少ぎこちない部分もあります.しかしそれらがまた,著者のいうところの「完全有欠」(p.66,日本美術は完璧をめざさない)を象徴していて,本作品独特の風味を醸し出すのに成功している.

宮沢賢治作品との運命的な出会い(p.73),うすっぺらい日本論に対する反駁(p.91 五つの独自な文化),井上ひさしとの出会い(p.123),戦メリの助監督として(p.148),70年代,80年代における前衛的な芸術家,脂ののりきった作家,時を代表する女優や俳優との交友.それらの体験を通して著者の中にとりこんだ「日本」を紙面にいきいきと描き出しています.

本のタイトルと,なんの関連もないような日本における個人的な体験を綴る目的は,若い読者(私は若くありませんが)に対して,今生きているこの日本というものを再確認し,もう一度「反逆精神」を取り戻して新しい日本を作って欲しいということなのでしょう(p.22,新しい日本をつくるのは反逆精神だ).

本書を通じて説かれる精神は,「反逆者たれ!」ということと,私は受け取りました. 「不適応者や偶像破壊者や「変わり者」に創造の機会を与え,若い人がぼくらにくって かかること,もっと言えば逆らうことを奨励することです.」(p.251) これこそが世界をリードする創造立国日本を作り出す原動力である,と著者は言いたかったに違いない.

他に「人生で重要なのは,自分がどう感じるかということであって,ほかの人が自分をどうおもっているかではないのだ.」(p.173)との言葉が印象的でした.なぜなら,ちょうど同じことを言っている本を思い出したからです.そのタイトルは,"What Do You Care What Other People Think?" です.訳書でのタイトルは,なぜか「困ります、ファインマンさん」となっています.

これはつまり,「自分の世界観に忠実で,自分にとって正しく強い生き方をすること」(p.253)そのものです.それこそが独創性を生み出す鍵なのでしょう.

読書の始終,まるで心の通った友人に話しかけられているかのような心地よさを感じました.単なる政治観や歴史観がどうのこうのなどという面倒なことを吹き飛ばすだけの力をもっています.自分の人生を変える可能性のある本,そんな本には滅多にお目にかかれない.味わって,丁寧に最後まで読んでこそ,この本の価値がわかる,と思います.

訳書のはずですが,ここまで丁寧に書き込まれるというのは,ほんとうに珍しい.翻訳者の力量も優れている.著者も自ら日本語になった原稿を再び校閲したのだろう.

西洋芸術的な「対称性がとれた完璧なもの」より,和風芸術的な「どこかくずした,味のあるもの」がお好きな方にお勧めします.

そうゆうわけで,決して万人むけではないため星4つとしました.