2009年5月29日金曜日

スマートに

経済を物理的解析の対象として見た場合,一般の自然現象と異なる点がいくつか上げられる.

市場の動向を観測している者は,通常,投資家でもあり,価格の推移と世間一般の諸々の情報を勘案して次なる投資先を決める.仮に同様な判断を下す投資家が何人もいたとする.結果として相当な資金が「儲かる」と判断された投資先に流入することになる.一件の投資の規模が小さいものであっても,多くが集まれば話しは別である.投資という行為が投資先の株価に影響を与えうる.

つまりこのシステムには,投資家が市場を観測することで投資先を決定し,それによって将来の市場が影響をうける・・・との無限連鎖が存在する.

観測と,それに伴う行為が将来の結果に影響を与えるのだ.現時点における市場を観測したデータをベースとした「次なる投資」が市場の行方に及ぼす効果までを織り込んで,次の投資先を決める・・・といったアクロバティックな発想が必要とされる.原因と結果が複雑に入り組んでいる.もちろん現代物理学においては,そのような因果関係にあるシステムも良く知られている.しかしだからといって同じルールが市場の動向の予測に適用できる・・・などといったことは,ほとんどあり得ない.市場を支配する万能の黄金則を見いだすことができない理由はここにあると思う.

定量的市場経済解析主義者の代表でもあるquantらはウォールストリートでも煙たがられている.「この金融危機を招いたのはquantたちではないのか・・・」.

「市場は複雑すぎるコンピュータモデルに依存しすぎだ」少なくても米国の伝説的投資家であるWarren Buffettはそう見ている.

quantは市場を解析するプログラムをつくる.それに従って次なる投資先を決める.多くの試験的投資を繰り返し,利益を上げないプログラムは淘汰され利益を上げるもののみが生き残る.その時点でのさまざまな要因を加味できるようになったプログラムは,そこそこの利益を上げるようになる.

当然,どれも優秀なプログラム,あるいは別の言葉で言うと,どれも似通った判断を下す複雑なプログラムへと成長するだろう.そうやって作り上げられた幾つものプログラムが,やがて市場において本格的に運用されることとなる.それらは時の局面において当然の如く似通った判断を下す.それ故に大量の資金が同一方向へと瞬時に動く事態が発生する.

もちろん景気が良いときには問題は表面化しない.しかし一度でも景気が躓くと,見るも無惨な結果を招きかねない.階段を転げ落ちるように資金は市場から消えていくだろう.ウォールストリートのwizardたち,つまりquantたち,が作った金融プログラムは,その時,転げ落ちる速度を最大限に加速する装置として働く.Warren Buffettは言う.「IQが150あるのなら,そのうちの30を誰かに売ってしまえ.スマートになれる」

彼の成功は言うまでもなくIQ150のwizardたちが作ったプログラムによってもたらされたのではない.彼曰く「物事をシンプルに捕らえ,本能に従う」,ことによって獲得されたものである.



2009年5月14日木曜日

ジョグの後で

ナノ学会に参加するため東京に行ってきた。



夕刻、ホテルにチェックインする。荷物の整理もそこそこに、さっそくジョグの準備に取りかかる。バッグから取りだしたナイキのトレパンとアディダスのランニングシャツに着替える。もちろんシューズは持ってきた。




紐はゆるめに締めるが、あまった部分はランニングの邪魔にならないように足と靴とのわきに押し込む。途中、水分補給のためにスポーツドリンクを買うことができるよう、いくらかのコインをポケットにいれる。iPodを黒のウエストポーチに収めホテルから飛び出す。Jumpから始まる往時のロックサウンドのコンピレーションを伴に順調にジョグをこなす。



もっとも、通行人や自転車、その他さまざまな障害物などがあって、けっして高速に駆け抜けることができるわけではないのだが、それはそれ、別な楽しみ方がある。小さな小道に迷い込んだり、思いがけず、大きな公園に出くわしたり、散歩の犬にほえられたり。次々と変化する町の景色に身を置いているという、生き生きとした感覚がとても楽しい。



しばらく走ってホテルへと帰るころには、シャツがびしょびしょになるほどの汗をかいていた。部屋に入ってランニング用のシャツとパンツを脱ぎ捨てる。何はともあれ冷蔵庫から冷やして置いたサッポロビールを取りだしてゴクゴクと飲む。もちろん、うまい。



おもむろに旅行バッグからMacBookを取りだしてバスの戸口に設置する。iTunesを立ち上げてMac内蔵のスピーカーを最大音量にする。Billy JoelのMy Lifeを聞きながらシャワーを浴びるのだ。つづけて、そのままバス内に座り込み、ランニング用のシャツとパンツを石けんでごしごしと洗う。もちろん、だれも洗ってくれないので自分で洗うのです。



BillyのMovin’ Outを聞きながら、ときどきビールに手を出し、ごしごしと気楽に洗濯をする・・・これが結構楽しい。最後に洗濯物をかたく絞り、部屋の中あちこちに適当に干した。



一息つくとお腹がすいてくる。今日の夕食はホテルでインスタントな「超お手軽自炊」。もちろん、だれもつくってくれないので自分で作るのです。近くの激安スーパーで購入したボール入りのサラダを洗面台でケースごとざっとあらい、バジルにオリーブオイルを加えたイタリアンドレッシングをどばどばと振りかける。料理はこれで終わり。



買っておいたカベルネの赤を片手に、口いっぱいに自己流ボリュームサラダをほおばる。サイドメニューには、少々の生ハム、チーズひとかけら、カットフルーツ、それに森永の板チョコを用意した。とても美味しい。



ふと、窓から見えるビルの夜景に目をこらす。

ベットサイドのiTunesはBoz ScaggsのWe’re All Aloneを奏でていた。