先月、研究室合同の卒業・修了を祝う会があった。みなさん、某JRや某大手電機メーカに就職が決まった。中には銀行に就職を決めた者もいる。理系の需要が金融機関にあるのだろう。
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��970年代後半から、実に多くの物理屋がウォールストリートに職を求めた。彼ら、彼女らは、専門の物理を捨ててファイナンスの世界へと飛び込んだのである。金融界に新境地を見いだすために。
ここで言う「物理屋」とは物理を専門とする研究者達のことを指している。もちろん「屋」というところには、良くも悪くも、ある種のプライドと若干の自虐的な響きがこめられている。
素粒子、宇宙論、固体物理学、電磁気学、生物物理、物理化学、・・・考えてみれば「物理学」という学問の裾野のなんとひろいことか。物理を志す研究者たち の情熱の多くは新しい「物理」を切り開くことに注がれてきた。学問の裾野を開拓し、育て、やがては一つの分野として成立するまでに。
物理屋は一般にモデル化が得意だ。複雑な事象を観察し、原理原則に立ち返って解釈を試みる。何か事象があったとする。とりあえず、それを「支配している法 則」を仮定する。つぎにそれを使って予測・予言を試みる。それが、ある程度の普遍性をもって成立すれば、その法則が確立されたと見なす。そうでなければ、 仮定にたちかえり修正を加える。あるいは全く新たな法則を仮定する。改善された法則を使って、再び事象の予測・予言を試み、実証試験を行う。科学が成立し ていく行程そのものである。
この方法論の強力なところは基礎理論の確立がなされる点にある。それは今現在、単に、目先の事象を説明するものであってもかまわない。極論すれば、「証明されていないが、かなりの確度で信頼できる」ものであって良い。なぜならその意義は、人類がこれから生きていく中での莫大な応用の可能性によって未来に証明されるからだ。
N.Y. TimesのDennis Overbyeによる解説”Physicists Failed To Beat the Market”によると、物理の世界の出身者でウォールストリートに職を得た者は、今現在、約千人はいるようだ。彼ら彼女らはquantsと呼ばれる。quantitativeに、定量的に解析するのが得意なのがその理由である。
quantの思考回路の帰結として当然であるが、とにもかくにも複雑な経済の事象を物理的に解釈することを試みる。市場の動向を支配する原理・原則を仮定し、それをもとに「万能な金融モデル」らしきものを構築する。社の内外の開発部隊にレシピを渡し、複雑なコンピュータプログラムを完成させる。プログラミングが得意なquantだったら自らコーディングをするだろう。
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